中野をてくてく歩いていると“ワンコイン漢方”というキャッチコピーに惹かれ足が止まる。
店先には所是ましと袋詰めされた漢方らしきものが丁寧な説明と共に並び、ひとつひとつ見ているだけでも面白いのだが、
なにより目が行ってしまうのは漢方の神様が語りかけているようなメッセージたち。
「大丈夫だよ、漢方は心の悩みが得意だし、私があなたの“心のコーチ”になるからね」、
「ワンコイン漢方 どこにもないワンダーランド」など、
「あれ、もしかして怪しいところ……?」とますます興味を持ち、店内に突入してみました。
<いかにも漢方らしい、漢の字>
<初心者には、安心も不安も与えるメッセージたち>
ほわ~んと、さまざまな漢方と思われる香りが漂う店内。そして店先にも負けず、店内にも漢方らしいものの嵐!!
<約500種類の漢方薬・民間薬が並ぶ>
<漢方だけでなく、スパイスや茶葉も豊富>
これはどうしたらいいのでしょう。おどおどしていると、ようやく店主に出逢えました。
<3代目 薬剤師の宮本 篤さん。気軽に症状やお悩みも聞いてくださり、それにあったものを出してくださる“先生”>
宮本さんのおじいさま、馬場さんが独立しこのお店を創業して100年余。
2代目宮本さんのお父さまが婿養子としてこのお店を継ぎ、こうして今、3代目の宮本さんへと続いている、中野を代表する老舗店のひとつなのです。
さて、みなさんは普段、漢方を取り入れているでしょうか?
これまで馴染みのない筆者はまず、そもそも漢方とはなんですか?から質問してみました。
「中国の漢時代、日本に伝わった治療法があったのですが、中国では馴染まなかったその治療法が、
日本の風土や体質に合わせて独自に発展して残ったのが漢方です。湿気のある日本に合っていたのでしょうね」。
言い換えると、漢方とは、中国で廃れようとしていたものを日本が目をつけて成功に導かせた日本発祥の医学療法、ということでしょうか。
蒸したり、乾燥させた植物や鉱物など、薬効成分を持つ自然素材は生薬と呼ばれ、
約500種類のそれらを2種類以上調合してできるのが漢方薬と言います。
ということは、漢方とは100%オーガニックの自然のお薬。
病を持つ人向けという印象を受けますが、体質改善など、身体の中から健康にするという教えの漢方は、
普段から積極的に取り入れてもいいのではないでしょうか。
<この症状にはこの生薬で作られたこの漢方、というように、漢方薬は基本、レシピが決まっているのだそう>
「漢方は身体や心の症状に合わせて作られているので、健康な方は民間薬を取り入れる程度でいいと思いますよ」と宮本さん。
民間薬とは、いわゆるどくだみ茶やハーブティ、スパイスなど、庶民の間で美容・健康に言いと伝承されてきた、主に植物起源の生薬のこと。
漢方薬と民間薬との違いは、薬剤師などの専門家により調合されたものか、庶民に語り継がれたかの違いと言うわけですね。
<例えば花粉症予防なら。ネトルの茶葉が民間薬(左)。お湯でことこと煮て“煎じて”頂きます。
いくつもの生薬で調合されたショウセイリュウトウが漢方薬(右)>
それでは、筆者チョイスの気になる漢方薬・民間薬をいくつかご紹介したいと思います。
【漢方薬 編】
<冷え性対策、血液サラサラ、花粉症予防、脂肪燃焼など、美にも効果的な漢方>
【民間薬 編】
<民間薬というよりスピリチュアル、浄化を促すお香のホワイトセージ(右)と、お灸として使うもぐさ(右)>
【番外編①~立ち呑み】
<酒好き店主の粋なはからい! ブランデーに2週間以上漬けた薬膳酒がたったの200円で呑むことができます。
滋養強壮バツグンの朝鮮人参酒と、疲労回復や老化防止のクコ酒の2種類をご用意>
<愉快な店主の粋なはからい! なんと“つまみ”と称されたさそりの乾燥姿100円をご用意>
<つまり、こんな珍立ち呑みセット300円が中野のど真ん中で実現するのです!
※さそりは1匹100円。この中から好きなサソリが選べます>
【番外編②~手作り~】
朝鮮人参酒
<500円で手に入るならば作ってみたくなる朝鮮人参酒。サムゲタンにも使えると言いますが、
200円試飲のファンになり、ウィスキーで漬けてみました>
シコン(紫根)の化粧水
しみとり・つる肌に効果があるらしいシコン(紫根)とは、白い花を持つ多年草の根の部分で、
ここに解毒などの効能があるのだとか。
細かく刻まれたシコンは、化粧水や入浴剤として身体の外から取り入れるおすすめ法があり、
気になった化粧水を作ろうとお買い上げしました。
これら、ほとんどの漢方薬、民間薬がワンコインという手軽さがうれしい。
敷居も値段も高いと思われた漢方がワンコインで買えるのはなぜなのでしょうか。
「製造も販売もわたしがしているからですよ」。……。個人店の魅力、老舗の魅力に出逢いました。
==========================
馬場 香嶺堂薬局
【住所】東京都中野区新井1-11-7
【Tel】03-3386-2270
【Open】12:00~20:00
【Close】水曜日
【最寄り駅】JR「中野」駅北口より徒歩約8分
http://koureidou.world.coocan.jp/
Writing/photo湯野澤いづみ