8月始めに開催された阿佐ヶ谷七夕まつりのハリボテ密着に続き、今回は中野のすぐお隣、
高円寺で今週末開催される夏の風物詩 高円寺阿波おどりの裏舞台に潜入して参りました。
西の徳島、東の高円寺
地域に根付く祭というのは、「活性化」を願い住民が試行錯誤で始めるもののようで、
阿波踊りを開催している市区群は全国で60ほどにもなります。中でも発祥の地 徳島の阿波踊りに
匹敵するほどの大所帯、現在では約1万人の踊り手、100万人もの観客で賑わうほどに成長した東を
代表する高円寺阿波おどりは、昭和32年にスタートしました。
本場の阿波おどりに追いつけ!と、高円寺の有志たちは徳島に通い始め、地元の踊りグループ=連も舞うために
高円寺まで上京するようになったりと、友好関係も盛んです。高円寺で踊り沸かすその数168連。
今回はご縁あって、花道連に密着させて頂きました。
心臓の鼓動をイメージした
リズムが特徴の花道連
花道連が発足したのは今から23年前の1995年。
連には、〇〇郵便局連など企業連もあり、花道連の2代目連長 名和さんは元々、企業連に参加していました。
花道連の初代連長によるオファーを受け花道連に異動したと言い、連と連の移動も珍しくないようです。
<約70名+キッズが入連している花道連。高円寺阿波おどり、三鷹阿波おどり、都立家政の
かせい阿波おどりのほか、老人ホームでのボランティア阿波おどりなど、積極的に活動しています>
<「連を新しく立ち上げるには2~300万ほどかかるんですよ。衣装やお囃子(おはやし/楽器のこと)
なんかを揃えるからね」と連長であり鉦(かね)を担当する名和さん(写真右:提供 花道連)。
鉦はお囃子のテンポを決めるだけでなくオーケストラで言う指揮者のような存在で、連全体の動きも仕切る大事な役割>
そうまでして連を持つということは、理想の空間を造り、
そこに集う仲間たちと交流する“自分の店を持つ”ような感覚でしょうか。
そう、だから連に入ることに特別な条件はいりません。
お店のドアを開けてカウンターに腰をかけ、ビールを呑みながらマスターと話をしてみたら盛り上がって常連になった。
そんな風に、「花道連に参加したい」方は誰でもウェルカム。
呑み代を払うように、年会費(大人8,000円、子ども別途)を払って仲間となれば、
月2回ほど実施している練習(3~4時間)や年6回ほどある本番(祭や公演)に参加できます。
踊り手のひとり、大阪出身の梅本さんは「踊り手だった先輩を見学していたら自分も踊りたいと
思うようになりました。普段は仕事していますが、みんなと動きを合わせていい汗かくこの趣味は日々の
いいエッセンスになっています」と話します。
<男踊りを舞う梅本さん(左)>
親子で参加している越石さんファミリーは、「始めは子どもが“やりたい”と言ったので参加させましたが
そのうちわたしたちも参加するようになりました」と、お子さまは踊り手、越石パパは大太鼓、
越石ママは竹で参加しています。
高円寺が地元という河地さんの担当は締太鼓。「6才のとき阿波踊りに飛び入り参加したらとっても疲れて
二度とやりたくないって思ったんです(笑)。でも大人になってから音楽が好きでベースやドラムを
やっていたんですが、踊り手じゃなくてお囃子だったらやってみたいな、と思って復活しました。
連を決めるとき、花道連の独特な音に惹かれて入連。
母も妹も踊り手で、3人で毎年参加しています」と、活き活きした目で話してくださいました。
<写真右が竹担当の越石ママ。1970年代に導入された阿波おどりでは比較的新しい楽器です。
その左隣が大太鼓担当の越石パパ。越石パパママは、前方のちびっこ踊りで踊る娘さんを
見守りながら音を奏でます。
写真左が締太鼓担当の河地さん。踊り子のテンションを高揚げさせるリズミカルな音を出します>
3つの踊りパートとお囃子から成るナンバ踊り
ナンバとは右手と右足、左手と左足をそれぞれ同時に出して歩く歩行法で、
江戸時代まで日本人はこの歩き方をしていたと言われています。
<佐〇急便の旧ロゴマーク。ナンバ走りで配達しています>
阿波おどりの特徴はこのナンバが基本になっています。
<同じ側の手足を揃えて踊る>
7月某日、花道連の稽古を訪ねました。
<左から男踊り、女踊り、女ハッピ踊り(女性による男踊り)の基本姿勢とお囃子。
男踊りと女ハッピ踊りは中腰で踊るし、女踊りは始終つま先を立てながら踊るし、お囃子の楽器は重いし、
と各パートまさに神業!>
男性であれば、1 男踊り 2 お囃子
女性であれば、1 女踊り 2 女ハッピ踊り(男踊り) 3 お囃子
と選べるということですが、「全部経験しました」という強者さんも!
<本番間近なので、立ち位置なども入念に打ち合わせ>
花道連は高円寺阿波おどりが開催される1週間前、三鷹阿波おどりにも
出場されるということで応援にかけつけました。
第51回 三鷹阿波おどり
今年25連、約1,200名の踊り手で構成される三鷹阿波おどりは
高円寺ほど規模は大きくなく、アットホームな地元祭として愛されています。
祭開始の4時間前から控室ではヘアセット・お色直し・着替えでごった返します。
<パート事に衣装スタイルも変化。着付け合います>
<パート事のスタイルお披露目! 左から、ちびっこ踊り男の子、ちびっこ踊り女の子、女ハッピ踊り、
女踊り、男踊り、お囃子>
<後ろ姿も艶やかで惚れ惚れ。パート事に衣装の色やデザインが異なる連もありますが、花道連はどのパートも
藤色で統一していることも特徴です>
<“男の花道 女の花道 連の花道 ここにあり”、“阿波の花道 踊りの花道 円寺の花道 ここにあり”。いい言葉です>
<こちらのおふたりは大太鼓担当。左の衣装は初代のもので、大太鼓はとくに衣が傷みやすいので
古い衣装も大切に使っているようです>
<天下の花道、とはまさにこのこと!>
<控室に今日の花形たち約70名が終結し、最終打ち合わせ>
<オメカシキッズもお披露目まで時を待ちます>
<いざ、出陣!>
踊る阿保に見る阿保
同じ阿保なら踊らにゃ損々
なんとも愉快なこの唄とリズムに身体をゆだね
「やっとさー!」と踊り狂う阿波おどり、スタートです!
<来ました来ました、花道連の舞!>
<ナンバ踊りがちぐはぐでも拍手が沸き起こるちびっこ踊り>
<元気いっぱい、女ハッピ踊り>
<連の大黒柱、男踊り>
<連の花形、艶やかな女踊り>
<連の要、お囃子隊も参上>
カツカツカツカツ、ザッザッザッザッ、
ツンテンツンテン、
ドカドカドンドン。
「いちかけ にかけ さん かけて、
しかけた おどりは やめられぬ。
あ、やっとさーやっとさー♪」
血が騒ぐ、とは踊り手の軽快な踊り、掛け声だけではない、
お囃子のどんどん高まるビートが本能的に心をグッと掴まれます。
なんて活気があるのでしょう、なんて素晴らしい風習が日本の夏にはあるのでしょう、
そんなことを想いながらクルクルと変化していく舞に目が釘付けになってしまいます。
<一区間での踊りが終わると裏道を歩き、次なる踊り場へ>
<各所で給水所も設置されています>
ほかの連も実に鮮やか。基本のナンバ踊りを変形させた舞、お囃子をアレンジし、連独特の舞を披露します。
<鮮やかカラーの衣装をまとうみたか連>
<躍動感溢れる三鷹商工連>
11もの賞を獲得する連はいかに!?
20:20になると湧き立つ乱舞は終焉を迎え、疲れ切った踊り手は控室へ、
余韻冷めやらぬ踊り手は会場に残り記念撮影など散らばります。
そんな中、祭は表彰式というフィナーレへ。
三鷹らしく、三鷹の森美術館長という賞もあり、どうやら
三鷹の森美術館の年間パスポートがもらえるというウワサも。
次々と連が呼ばれる中、司会者が勢いよく叫びます。
「いよいよ最後のひとつなりました、三鷹市長賞の発表です!」
ドドドドドドドーーーーーン。。。
「花道連!!!」
わわわわわーーーーっっっ!
短い間でしたが、密着させて頂いていた連がトップの賞を取るという快挙。
<実は過去にもいくつか賞を獲得している、実力派な連だったのでした>
「もちろん賞はうれしいです。でも踊りたい、奏でたい、弾けたい。
仲間でそれを作り上げる、そこなんですよね」とメンバーのひとり。
さぁ、今週末、三鷹阿波おどりの約6倍、168連が集う高円寺阿波おどりが始まりますよ!
地面が叩き割れるような、人口台風が発生するかのようなあの躍動感を味わってみてください。
そして連はフィーリング。舞なのか、リズムなのか、衣装なのか、雰囲気なのか。
もし観覧中に「ビビビ」と来たら、あなたも連の仲間入り。来年はその舞台で舞っているかもしれないですね。
<高円寺阿波おどりを舞台にした絵本も合わせてどうぞ。やっとさー/篠原良隆/愛育社>
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第62回 東京 高円寺阿波おどり
【日時】8.25(sat)、26(sun)17:00~20:00
【場所】@JR「高円寺」駅、東京メトロ・丸ノ内線「新高円寺」駅
周辺商店街及び高南通りの8演舞場
http://www.koenji-awaodori.com/
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Writing/photo湯野澤いづみ