猛暑続きですが、いかがお過ごしですか?
政府もついに「災害」と称してしまった今年の酷暑ですが、せっかくの夏!
熱中症に気を付けつつも熱狂を味わうべく訪れたいのは、
東京を代表する夏まつりのひとつ、阿佐ヶ谷七夕まつり。
阿佐ヶ谷駅が誕生したのは今から96年前の大正11年。
それから起こった戦争、そして戦後の混乱がまだ続く中、なんとか地元 阿佐ヶ谷に人を集め、
活気立てようと考えた住民が試行錯誤で阿佐ヶ谷七夕まつりをスタートさせたのが昭和29年。
今年で65回という老舗まつりなのです。
「東京タワーが開業される前から」と言っても老舗感が伝わらないでしょうか。
ならば!
<記念すべき第一回 阿佐ヶ谷七夕まつり。この頃から吹流しなどあったのですね>
提供:パールセンター商店街
まだ商店街にアーケードがついていないとか、こうして記録が残っているのもすごいですね。
そもそもその後アーケードがついたのも、この七夕まつりをより盛り上げるためのようです。
短冊に願いを書いたり笹飾りや吹流しを眺めるだけでなく、ここの七夕まつりの見どころは
ハリボテを観るでしょうか。
阿佐ヶ谷には10以上の商店街がありますが、駅周辺の8つの商店街全体でジャズ演奏や落語、
射的などの縁日や屋台、セール企画などで賑わいます。
中でも阿佐ヶ谷イチのメイン商店街、約250店舗が集う約700mのパールセンター商店街
での手作りハリボテは圧巻!
そもそもハリボテってなに?
ハリボテとは、木などで組んだ枠に紙などを張りつけて形を作るもの。
<巨大ハリボテ。大きさもさまざま>
提供:パールセンター商店街
そんなハリボテですが、デカいし繊細だし、プロが作っておまつり前に運んで
アーケードに設置しているのですね。
と思いながらトコトコ阿佐ヶ谷を歩いていたら驚き。その場で作っています!
<骨組み制作中。女性も制作に携わるのですね>
<骨組みは木と針金が基本。針金はガムテープで止めています>
「こんにちは~。ハリボテ業者の方ですよね?」
「いえ、ここの細野工務店スタッフです」
「え……? ほ、本業は……?」
「約一ヵ月前くらいからでしょうか、ハリボテ制作するこの時期は本業の合間にこうやって作ってます」
えーーーーーっっっ!
なんと、阿佐ヶ谷七夕まつりのハリボテは商店街の各店舗スタッフそれぞれの手作りというのです。
いわゆる、パールセンター商店街にお店を構えるのであれば条件のひとつに「ハリボテを作る」
「七夕まつりに積極的に参加する」があるのだとか。
もちろん、絶対条件ではなく、参加しないお店もあるようです。
ここ、細田工務店さんが商店街に店舗を構えて7年。初年度から七夕まつりに参加しているので、
今年で7回目のハリボテ作りです。
<1日作業が終わるとこうして吊るしておき、また翌日、下ろして作業>
「どうやってハリボテの技術を得たんですか?」
「商店街の班会議などで講習がありますし、わたしたちの場合は隣の蒲重さんに親切に教えて頂きました」
蒲重かまぼこ店とは、創業昭和11年の老舗店。商店街のみなさんから「アニキ」と呼ばれ親しまれている
3代目の太田さんは、生まれも育ちもここ阿佐ヶ谷。
<蒲鉾やおでんなどを手作り販売する老舗の蒲重蒲鉾店3代目の太田さん(右)と、娘の麻綾さん(左)。
商店街のみなさんからとても慕われているおふたり>
太田さんは高校生のときからハリボテ作りを手伝い始めて35年、ハリボテのプロとも言え、
この時期になるとご近所商店街のハリボテ作りにも積極的に協力しているようです。
「細田工務店のように店の前で作るところもあるけど、場所を借りて
作っている人たちもいるから、行ってみなよ」。
と太田さんに教えて頂いた役場の裏に行ってみると、おぉ、あるある!
この作業だけのために設置されたテントの下に4つのハリボテがあり、それぞれが作業されていました。
<店舗はほかのスタッフに任せ、こうしてハリボテ制作に没頭します。お店によっては、
閉店後に作業するとこともあります>
こちらは商店街で婦人服を販売している老舗店のめぐみやさん。
毎年 巨大なハリボテを作り、賞も獲得することで有名です。
<ハリボテに使われる紙は茶ちり紙という、ふすま紙のベースになる下張り用の紙。
ひとりは茶ちり紙にノリをつけ、もうひとりがそれを骨組みに張っていきます>
<こちらは2014年、一番高い賞となる杉並区長賞を獲得しためぐみやさんのハリボテ。
プロが作ったとしか思えませんね>
提供:パールセンター商店街
めぐみやさんのハリボテは大きさだけでなく、壁画もあること。
お、これはもしかして……。今年のめぐみやさんのハリボテはスターウォーズでしょうか?!
<壁画もスタッフさんによるペイント。ハリボテとどうコラボに仕上がるのでしょう>
おっと! そうこうしているうちに休憩という名の呑み会が始まりました!
隣でハリボテを制作しているみなさんにも差し入れをしています。
<「こうやって休憩を入れて、話しながら作ってますよ。ハリボテ制作が苦と感じることもあるけど、
商店街通しの絆も深まるからね。もう今日の作業は終わろうかな(笑)。姉ちゃんも一杯どう? つまみも、ほら」>
お言葉に甘えてメモとペンを置き、枝豆と一杯を頂きました。
「阿佐ヶ谷、暖かい人たちばかりだな」。
それから数日後の7月31日、
また阿佐ヶ谷を訪ねてみました
というのも、おまつり前に完成しているハリボテは当日を待たずにどんどん吊るされていくというのです。
「ハリボテの賞はお客さんでなく商店街の店主らの投票によって決まります。
ですので、少しでも早く完成して吊るし、多くの方たちに見て頂きたい」と話してくださった細田工務店さん。
おまつり初日の3日前、どれくらい進んでいるのでしょうか?
<商店街入口には吹流しなどが飾られ始めました>
<蒲重さんの上にも吊るされました。今年はドラえもんのようです>
そして蒲重さんのお隣、細田工務店さんがとんでもないことに!
<すごい巨大!! サイズは約2.5~3m、重さは約20kg、制作費用は5~6万といいます>
細田工務店さんのハリボテの特徴は茶ちり紙でなく、その上から綿をつけるオリジナルハリボテです。
<2013年に銅賞を獲得した細田工務店さんの綿ハリボテ>
提供:パールセンター商店街
今年はフィギュアスケート女子金メダリストのザギトワ選手が
ご褒美に頂いた秋田犬“マサル”にちなんで、秋田犬ハリボテを制作しているようです。
<白と茶の綿をノリでペタペタ。根気のいる作業>
<道行く人たちもキョロキョロ。「今年はなにを作ってらっしゃるの?」と声をかける方も。
「店の前で作業しているとこうして工程を見てもらえたり、声をかけてもらって
おつきあいできるのも嬉しいですし、励みになります」と細田工務店さん>
<巨大ハリボテで有名なめぐみやさんはやはりスターウォーズ!ハリボテはチューバッカのようです。
ブルーシートが外される当日が愉しみですね>
めぐみやからまた蒲重さんに戻り
この暑さでほてった身体を潤わせるべく、ところてんをひとつ注文。
<阿佐ヶ谷の看板娘さんによるところてん作り。眺めているだけでも涼し気>
阿佐ヶ谷の杉並第七小学校の4年生と、阿佐ヶ谷中学校1年生は課外授業の一環として
ハリボテ制作があるようで、太田さん含む商店街店主がハリボテ先生として出向くようです。
「みな本業の合間に作るからね。そりゃ大変だし、賞を取れたら材料費くらいのお金は入るけど
それが目的ではない。阿佐ヶ谷に来てもらったお客さんに愉しんでもらいたい。それだけで作っています」と太田さん。
昔から、阿佐ヶ谷とハリボテは共に歩いているようで、本業以外にハリボテ職人という肩書が
持てると言っても過言ではありません。それくらいプロ並みのハリボテ技術を見学し、
阿佐ヶ谷の人情に出逢うことができました。
おまつりの当日に彩られる七夕飾りやハリボテはこうして本業と並行し、日々汗水流して職人顔負けのハリボテを
作る商店街の有志の「訪れてくれたみなさまに楽しんで頂きたい」という阿佐ヶ谷おもてなし心そのもの。
そんな気持ちでぜひ今年の七夕まつりに出向き、アーケードを見上げてみてください。
週末はもちろん、PICNIC GOHANがOPENしている8/3(金)、6(月)7(火)はランチとはしごでいかが?
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第65回 阿佐ヶ谷七夕まつり
【日時】8.3(fri)~8.7(tue)10:00~22:00
【場所】@パールセンター商店街、すずらん通り商店街、
および阿佐ヶ谷駅周辺商店街
【お問い合わせ先】
阿佐ヶ谷商店街振興組合 03-3312-6181
http://www.asagaya.or.jp/
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Writing/photo湯野澤いづみ